日本皮膚科学会雑誌
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皮膚のバリアとしての角層
田上 八朗
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1998 年 108 巻 5 号 p. 713-

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抄録

私たちの皮膚は表面は,20ミクロンにも充たない薄い生体由来の膜である角層にくまなく包まれている.これがあるため,乾燥した大気中でも,生体の生命活動に必要な水を失うこともなく,また,外からの微生物を含め生体に傷害を与える物質の侵入が防がれる.角層は表皮のケラチノサイト由来の角層細胞が大体14,5層緊密に積み重なり,その間を細胞間脂質が埋めるというbricks-and-mortar modelとたとえられる煉瓦建造物のような構造をなす.細胞間脂質の主体はケラチノサイトの層板顆粒から放出されたセラミド,コレステロール,脂肪酸からなり,水と脂質のラメラ構造をなし,これがバリア機能を司る.また,角層の水溶性アミノ酸など天然保湿因子とともに,角層の水分を保ち皮膚の表面に滑らかさ,柔らかさを保つ働きをする.一般に皮膚炎などの表皮を中心とする病的状態では角層にも異常がおき,バリア機能,水分保持機能が低下し,鱗屑や亀裂ができる.しかし,老人性乾皮症のようにバリア機能は保たれ水分保持機能のみ低下した状態や,新鮮な瘢痕やケロイドなどはレチノイドの影響下の角層と似て,水分保持機能はむしろ良く,バリア機能は低下しているなど,病変による違いも認められる.また,閉鎖密封やステロイド,レチノイド,ビタミンD3,アルファ・ヒドロキシ酸処置で,それぞれに特有な角層の変化がおきる.これら角層の微妙な違いは従来の臨床観察や組織的な検索のレベルでは,まず捉えることは不可能であり,近年発展した生体計測工学の機器を用いた計測により,はじめて,定量的に調べることができる.

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© 1998 日本皮膚科学会
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