日本皮膚科学会雑誌
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皮膚筋炎における間質性肺炎と皮膚症状との関連性の検討
山上 美江衛藤 光新井 春枝勝岡 憲生西山 茂夫
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1998 年 108 巻 8 号 p. 1021-

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抄録

1971年8月から1997年3月までの26年間に北里大学病院皮膚科を受診した皮膚筋炎患者109例,および1995年1月から1997年3月までに国立横浜病院皮膚科を受診した皮膚筋炎患者3例の計112例について,間質性肺炎の有無,さらに間質性肺炎をその臨床経過から急性型と慢性型に分け,それぞれの皮膚症状について比較検討した.皮膚筋炎全体では爪囲紅斑,ゴットロン徴候,ヘリオトロープ様紅斑などの疾患特異的皮膚症状の出現頻度が高率に認められ,また非特異的皮膚症状としては顔面の紅斑,四肢関節背面の紅斑,色素沈着が多くみられた.間質性肺炎を伴う症例は112例中39例(34.8%)でそのうち間質性肺炎が急速に進行した急性型は39例中12例(30.8%,全例死亡),緩徐に進行した慢性型は34例中27例(69.2%)であった.間質性肺炎合併群では,非合併群に比べ,四肢関節背面の紅斑以外に四肢関節伸側の潰瘍やアクロチアノーゼ,指端潰瘍といった循環障害性の皮膚症状と手指腫脹,滲出性の紅斑が有意に認められた.また反対に多型皮膚萎縮は間質性肺炎非合併群に多く,有意差を認めた.間質性肺炎急性型では滲出性の紅斑が12例中3例(25%)にみられ慢性型に対し有意差がみられた.1例は手指関節背面に,2例は手指関節の側面に認められた.以上の結果より,アクロチアノーゼ,四肢関節背面の潰瘍,指端潰瘍の循環障害性皮膚症状と四肢関節背面の紅斑,手指腫脹,滲出性の紅斑は間質性肺炎合併群でみられやすい症状であり,特に手指関節にみられる滲出性の紅斑は急性型の間質性肺炎と関連があると考えられた.悪性腫瘍合併群では非合併群にくらべ有意差は認められなかったが間質性肺炎の合併率は低い傾向にあった.また,間質性肺炎と筋症状との関連性はみられなかった.皮膚筋炎の死因として間質性肺炎は悪性腫瘍についで多くの割合を占めていた.間質性肺炎合併群においてはその死因の70%が間質性肺炎であり,間質性肺炎の有無は予後を考える上で重要であると思われた.

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© 1998 日本皮膚科学会
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