日本皮膚科学会雑誌
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妊娠を契機に出現した悪性黒色腫の1例―組織中の5-S-CD値測定の意義―
長野 文子渡邊 亜紀野中 由紀子古賀 哲也若松 一雅伊藤 祥輔中山 樹一郎
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1999 年 109 巻 11 号 p. 1621-

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抄録

31歳,女性.幼少時より下腹部に黒色~灰色~茶褐色のまだら状の皮疹を認めていた.妊娠を契機に皮疹は増大・隆起し,第1子出産後,当科を紹介され受診.下腹部正中やや右寄りに22×17mmのまだら状斑がありその中央部に径1cm大の黒灰色結節が存在.腫瘤の近縁は不整で周囲に染みだしも認められた.excisional biopsyを施行.病理組織学的に悪性黒色腫と診断し,その後拡大切除術および右鼠径リンパ節郭清術を施行.HE染色にて摘出した所属リンパ節に明らかな転移巣はなかったが一部にHMB-45染色陽性の細胞が認められた.切除した組織中のエストロゲンおよびプロゲステロンレセプターは陰性であった.StageⅡ(pT3bNoMo)と病期分類し,術後補助療法として化学療法および免疫療法を行った.さらに,本症例の切除標本の組織中5-S-CD値を測定し,初診時の切除標本で,腫瘤部は73.40ng/mg,腫瘤部近傍は0.76ng/mg,腫瘤部より約2.5cm離れた部位は0.70ng/mgという結果であった.さらに原発巣部の拡大切除時の標本で,中央の原発巣部に一致して4.75ng/mgと組織中5-S-CD値の軽度高値を認め,瘢痕より約5cm離れた部位は0.32ng/mgと低値であった.以上より組織中5-S-CD値の測定は微小な転移巣の早期発見,あるいは残存病巣の確認に有用性が高いと判断した.

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© 1999 日本皮膚科学会
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