日本皮膚科学会雑誌
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胸肋鎖骨間骨化症を伴ったアナフィラクトイド紫斑の1例
矢澤 徳仁轟 葉子河野 志穂美佐藤 佐由里守屋 修二江藤 隆史
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1999 年 109 巻 13 号 p. 2141-

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抄録

61歳,男.約1週間前より両下腿に紫斑が出現,徐々に大腿,前腕にもみられた.さらに膝関節痛,胸肋鎖関節痛,下痢も伴うようになった.初診時には両大腿から下腿,足背,前腕にかけて粟粒大から小豆大までの浸潤をふれる紫斑が多発.次第に下腿伸側は血疱,膿疱形成が著明となった.皮疹の増悪に平行し,右前胸部の発赤,腫張がみられた.血液検査では白血球数,血沈が著明に上昇,また尿蛋白は初診時では軽度であったが,皮疹の増悪とともに増加.大腸内視鏡では大腸粘膜に紫斑,不整形の潰瘍形成を認めた.皮膚の病理組織では真皮上層の血管壁は肥厚し,一部では閉塞,その周囲には好中球,リンパ球を中心とした細胞浸潤があり,白血球の核破片もみられ,いわゆるleu-kocytoclastic vasculitisと考えられた.腎臓の病理では巣状分節性の糸球体変化がみられた.自験例ではacute generalized pustular bacteridとの鑑別に苦慮するが,病初期には組織学的に真皮上層の小血管にleu-kocytoclastic vasculitisの認め,IgAの沈着のある腎炎の存在,腹痛がみられ内祝鏡にて直腸に紫斑がみられたこと,さらに膝関節痛を伴なっていたことからアナフィラクトイド紫斑と捉えた.また右前胸部の病変はCTにて右胸肋鎖関節部の骨肥厚,硬化像がみられ,骨シンチグラムで同部には異常集積が認められたことから胸肋鎖骨間骨化症と診断した.アナフィラクトイド紫斑と胸肋鎖骨間骨化症の合併は稀であり,さらに右前胸部の腫脹と皮疹の増悪が相関しており興味深い症例と考えられた.

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© 1999 日本皮膚科学会
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