日本皮膚科学会雑誌
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乳房外パジェット癌における腫瘍細胞の免疫組織化学的特徴について―乳房および乳房外パジェット病と比較して―
矢口 厚米元 康蔵勝岡 憲生
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1999 年 109 巻 4 号 p. 611-

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抄録

著しいリンパ浮腫を来した乳房外パジェット癌3症例を呈示するとともに,乳房外パジェット癌の腫瘍細胞の特性について免疫組織化学的に検討した.症例1は84歳の男性で,陰嚢部乳房外パジェット病の切除術後2年で左下肢の浮腫と大腿部の潮紅が出現し当科を受診.症例2は68歳の男性で,当科初診の4年前より他院で原発巣不明の右鼠径リンパ節転移性腺癌の診断.1年前より陰嚢部の紅斑と右大腿部の持続性浮腫が出現.症例3は72歳の男性で,初診3年前より自覚していた右陰嚢部の発疹が徐々に腫瘤を形成.4ヵ月前より右下肢の浮腫が持続,3症例いずれも大腿部に著明な浮腫および潮紅を認め,組織学的にはバジェット細胞の集塊が真皮リンパ管内を侵襲する像をみた.全例とも治療には抵抗性で,2例は短期間で死の転帰をとった.当施設における乳房外パジェット病9例,パジェット癌5例,乳房パジェット病2例の計16例,21検体を用いて,腫瘍細胞の免疫組織化学的特徴と臨床的な悪性度との相関について検討した.CA 15-3はすべての病型で腫瘍細胞だけが特異的に染色された.E-cadherinとCD9の発現傾向は類似しており,乳房外パジェット病ではほぼ全例が弱陽性あるいは陽性となるのに対し,パジェット癌と乳房パジェット病では,リンパ管内侵襲した腫瘍細胞を除けばほぼ全例が陰性であった.一方これに反して,C-erbB2ではパジェッ卜癌と乳房パジェット病で全例陽性となるのに対し,乳房外パジェット病における腫瘍細胞の陽性率は低下する.つまり乳房外パジェット病に比べ,臨床的に悪性度が高いと考えられるパジェット癌および乳房パジェット病の腫瘍細胞は、E-cadherinとCD9は陰性化し,遂にC-erbB2は陽性像を示す.病変組織におけるこれら抗体の免疫組織化学的検討が,乳房外パジェット病の臨床的・組織学的悪性度や予後判定に有用となり得ることが示唆された.

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© 1999 日本皮膚科学会
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