日本皮膚科学会雑誌
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皮膚と神経
豊田 雅彦諸橋 正昭
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1999 年 109 巻 5 号 p. 725-

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抄録

近年皮膚科領域における神経系因子に関する知見が集積されてきている.皮膚における最も重要な神経系因子は痒みという特有の知覚であるが,最近では神経系の免疫・炎症反応の調節および成長因子としての役割の重要性が認識されている.皮膚には約20種類のニューロベプタイドが存在し,神経原性炎症をひきおこすとともに,種々の皮膚疾患の病態に関与していることが明らかにされている.各ニューロペプタイドは,標的細胞上に存在する固有のレセプターと結合しその生物活性を発揮するとともに,エンドペプチダーゼなどの不活化酵素により影響を受ける.さらに末梢神経の成長・機能維持に働く神経成長因子も,ケラチノサイトに対する増殖活性など多彩な機能を有することが明らかにされている.皮膚,中枢神経系,末梢神経系(自律神経,体性神経),免疫系および内分泌系は,各情報伝達物質を介した相互作用を有しており,これらをneuroimmunocutaneous systemとして一つの枠組みの中でとらえ,皮膚疾患への関与の研究を進める必要がある.また,ストレスは,アトピー性皮膚炎,乾癬,円形脱毛症などの皮膚疾患の病態あるいは増悪因子として経験的にその重要性が述べられてきたが,ストレスの皮疹増悪機序の解明は未だ途上であり,我々皮膚科医にとって非常に興味深い.今後,精神・心理療法の皮膚科領域への導入およびニューロペプタイドをはじめとする神経系因子の皮膚疾患の治療への応用が期待される.

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© 1999 日本皮膚科学会
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