日本皮膚科学会雑誌
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ステロイド外用療法を主とした入院治療に対するアトピー性皮膚炎患者によるVisual Analogue Scaleを用いた評価
吉原 伸子檜垣 祐子有川 順子川島 眞
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1999 年 109 巻 8 号 p. 1173-

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抄録

当科では,重症アトピー性皮膚炎(AD)患者に対してステロイド外用療法を中心に抗アレルギー薬,抗ヒスタミン剤の内服を併用する全くオーソドックスな入院治療を行っている.この入院治療への評価を患者にVisual Analogue Scale(VAS)を用いて行ってもらい,同時にステロイド外用剤への恐怖感についてアンケートにより調査した.対象は1997年3月から12月までに当科で入院治療したAD患者39例で,性別は男15例,女24例,年齢は6ヵ月から60歳,平均23.7歳で,入院期間は3日から34日で平均11.2日だった.VASによる評価項目は入院時は皮膚の症状,痒み,睡眠障害,現在の症状の満足度,ステロイド外用剤についての5項目についてとし,退院時には,上記5項目に治療に対する満足度を加えた6項目とした.その結果,入院前後で皮膚の症状は平均12mmから73mm,痒みは20mmから72mm,睡眠障害は42mmから78mm,現在の症状の満足度は17mmから78mmといずれも大きく改善し,入院治療に対する満足度は91mmと非常に高かった.一方,ステロイド外用剤については,入院時平均42mmから退院時73mm(0;大変怖い,100;怖くない)と恐怖感の軽滅がみられた.アンケートは自由記載形式で,『怖くない』とのみ答えた2例を除く37例が何らかの恐怖感を抱いており,その理由には内服と外用の混同を始めとする誤認,誤解が多くみられた.また,これらの情報源としてはテレビなどのマスメディアを挙げたものが21人と最も多かった.ステロイド外用療法を中心としたオーソドックスな入院治療は,短期的には症状の改善や満足度に患者自身も高い評価をしており,またステロイド外用剤に対する恐怖感を取り除くためにも十分とはいえないまでも有用であると考えた.

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© 1999 日本皮膚科学会
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