日本皮膚科学会雑誌
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有棘細胞癌とケラトアカントーマにおけるE-cadherinの発現についての検討
小関 伸青木 武彦安齋 眞一穂積 豊三橋 善比古近藤 慈夫
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1999 年 109 巻 9 号 p. 1315-

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抄録

E-cadherinは上皮系細胞に存在する接着分子であり,その発現の減弱は腫瘍細胞の浸潤や転移と関連があると考えられている.われわれは皮膚有棘細胞癌62例(非転移例39例,転移例23例)の原発巣とケラトアカントーマ37例において,E-cadhehinに対する抗体を用いて免疫染色を行い,その発現を検討した.皮膚有棘細胞癌では62例中,18例(29.0%)にE-cadherinの発現が残存し,44例(71.0%)が減弱または消失していた.特に転移を生じていた23例の原発巣においては,21例(91.3%)がE-cadherinの減弱あるいは消失を示した.ケラトアカントーマでは37例中,26例(70.3%)が残存,11例(29.7%)が減弱または消失していた.さらに両腫瘍において,腫瘍の大きさとE-cadherinの発現を検討したところ,皮膚有棘細胞癌では相関はなかったが,ケラトアカントーマでは腫瘍が大きくなる(直径2cmを超えるもの)とE-cadherinの発現は減弱する傾向を示し,それは皮膚有棘細胞癌でのデータに類似した結果であった.以上の結果より,皮膚有棘細胞癌においてE-cadherinは転移を予測するマーカーの一つに成り得ると思われた.また直径2cmを超えるケラトアカントーマは,皮膚有棘細胞癌と同様にinvasive potentialをもつことが推測され,注意深い経過観察が必要であることが示唆された.

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© 1999 日本皮膚科学会
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