2000 年 110 巻 11 号 p. 1693-
欧米では全身性強皮症(systemic sclerosis;SSc),特にlimited cutaneous SSc(ISSc)患者において肺活量の低下を伴わず,%Dlcoが単独に低下する症例が存在し,そのような症例では高頻度に肺高血圧症を合併すると報告されている.しかしながら本邦では多数の症例で検討した報告はなされていない.今回著者らは,当科を受診した58例のSSc患者において%Dlcoの単独低下の頻度及び肺高血圧症や他の臨床症状との関連について検討した.結果は,ISSc患者において欧米での報告よりも2倍以上の頻度で%DLco単独低下がみられた.さらに,欧米例とは異なり重篤な肺高血圧症に進展する症例は認められなかった.また,ISSc患者においては%DLcoと腎糸球体血流量には有意な相関が認められた.従って,ISSc患者では肺,腎などの内臓諸臓器に循環不全が存在する可能性が示唆された.またISSc患者の肺病変には人種差が存在することが示された.