2001 年 111 巻 14 号 p. 2087-2092
1981年から2000年の間に奈良県立医科大学においてSjögren症候群と診断された患者の中で,典型的な環状紅斑を有し,定期的に血清を採取,保存し得た2症例(Case 1:副腎皮質ホルモン剤全身投与例,Case 2:同非投与例)を選出し,抗SS-A/Ro抗体及び抗SSB/La抗体の抗体価の測定を行った.そして,抗SSA/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の抗体価の経時的な推移,抗体プロフィールの変化を観察するとともに,抗体価と環状紅斑消褪との関連や,抗体価と副腎皮質ホルモン剤投与の有無との関連を検討した.測定はブタ脾臓臓器抽出液を抗原としたdouble immunodiffusion(DID),及び52 kd SS-A/Ro,60 kd SS-A/Ro,及び48 kd SS-B/Laリコンビナント抗原を用いたenzymelinked immunosorbent assay(ELISA)により行った.Case 1,2とも,長い経過中にDID,ELISAにおいて,徐々に抗SS-A/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の抗体価の低下を認めた.さらにCase 1,2とも,環状紅斑消褪の前後で抗SS-A/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の抗体価の低下を認めた.また副腎皮質ホルモン剤投与の有無にかかわらず,抗SS-A/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の抗体価の低下を認めた.経過中,抗体プロフィールの変化は認めなかった.