日本皮膚科学会雑誌
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原著
バザン硬結性紅斑の4例
横田 田鶴子有田 賢横関 真由美伊東 英里小林 衣子
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2001 年 111 巻 2 号 p. 157-164

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抄録

最近では経験することが少なくなったバザン硬結性紅斑を3年間という比較的短期間に4例経験した.全例ともに病理組織学的には皮下脂肪組織におけるlobular panniculitisの像を示し,血管炎を伴い,乾酪壊死とその周囲に巨細胞を混じるリンパ球,類上皮細胞の浸潤を認め典型的な像であった.しかし,臨床所見は,従来言われているような潰瘍形成などの典型的な像ではなく,下肢に多発する硬結性紅斑として出現した.硬結性紅斑が自然消退した最初の2例のうち1例は初診の2年後に肺結核を発症し,はじめて確定診断に至り,他の1例は以前に他院での病理組織所見から長い間サルコイドーシスを疑われ経過観察中に腺病性苔癬を発症したために診断できた症例で,いずれも診断確定に至るまでに時間を要した.それらの教訓から他の2症例の早期診断が可能となった.全症例ともツベルクリン反応は強陽性,組織の結核菌染色は陰性,皮膚組織片を用いた培養においても結核菌の検出はなかった.PCR法を用いた結核菌検索も陰性であった.近年,全結核罹患率の増加が指摘されるなかで,バザン硬結性紅斑の最近10年間の増加も報告されている.最近の結核の動向を反映するような症例を4例経験したことは興味深いと思われたので報告した.

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