2001 年 111 巻 7 号 p. 1091-1097
67歳の男性.神経線維腫症はない.平成7年11月項部の神経線維腫に対し,切除及び全層植皮術を施行したが,平成9年夏頃より植皮部の皮下に腫瘤出現した.切除標本の病理組織像では腫瘍部の辺縁は前回と同様の神経線維腫であったが,中心部はクロマチンに富んだ紡錘形の細胞が稠密に増殖し束をなして錯綜していた.腫瘍細胞はS-100陽性であった.本症例を神経線維腫から生じたmalignant peripheral nerve sheath tumor(以下MPNSTと略す.)と診断した.平成2年から平成11年までの10年間の間に本邦で報告された133例を集計し,考察した.その結果,神経線維腫症非合併群は合併群と比較して,診断確定時年齢が高いこと,四肢遠位側発症も少なくないこと,転移,再発までの期間が長いことが特徴としてあげられた.