日本皮膚科学会雑誌
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原著
膵癌に伴った皮下結節性脂肪壊死症の1例
神谷 玲子浅井 寿子成瀬 隆裕赤座 薫
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2002 年 112 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

56歳男性.平成10年8月頃より右膝関節の発赤,腫脹が出現.抗生剤の投与にて臨床症状は改善したが,9月頃より両側下腿後面に暗紅色の皮下硬結が出現し,以後両足背,両手背にも発赤,腫脹,疼痛が出現してきた.また,右肘関節,左手関節,左手指関節をはじめとする多関節炎も認められた.病理組織学的所見では,皮下脂肪織の炎症性細胞浸潤と脂肪細胞の壊死像を認めた.経過中に血清アミラーゼの上昇を認め,腹部CTを施行したところ,膵体部に直径7 cm大の腫瘍が確認された.リパーゼ,トリプシン,ホスホリパーゼA2も異常高値を示していた.平成11年1月,膵体部切除術を施行.腫瘍はAFP産生性の島細胞癌であった.術後皮膚症状,関節症状とも落ち着いたが,平成12年1月肝転移,腹膜転移に伴い膵酵素が再度上昇し,皮膚症状,関節症状とも再発した.肝転移等に対して動注化学療法を行うも徐々に全身状態悪化し,9月10日永眠された.本症は膵炎や膵癌に伴って生じる稀な病態で,膵癌の中では腺房細胞癌に多いのが特徴である.本邦で島細胞癌の報告例はなく,本症例が第1例目でありここに報告する.

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© 2002 日本皮膚科学会
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