日本皮膚科学会雑誌
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原著
水疱性類天疱瘡の病勢の指標についての多角的検討―臨床症状,血清IgE値,好酸球数,抗基底膜抗体価,抗BP180 NC16a抗体価―
岸本 和裕中村 晃一郎金子 史男
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2003 年 113 巻 11 号 p. 1695-1710

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抄録

近年,BP180 NC16a・ELISA法の導入により高い感度,特異性を有する類天疱瘡の診断および病勢のモニタリングが確立されつつある.しかし,類天疱瘡では多彩な臨床所見を呈し,水疱発症機序も複雑である.そこで,類天疱瘡患者8例について治療経過中,臨床症状(水疱,紅斑,そう痒),血清IgE値,好酸球数,Indirect immunofluorescence(IIF)titerおよび抗BP180 NC16a抗体価の推移について解析し,それらの臨床的意義を検討した.臨床症状の軽快に伴い,ほぼ全例で血清IgE値,好酸球数,IIF titerおよび抗BP180 NC16a抗体価の低下を認めた.そのうち,好酸球数と抗BP180 NC16a抗体価はより鋭敏に,一方血清IgE値とIIF titerはやや症状に遅れて低下する傾向があった.また,症状の再燃時に好酸球数,IIF titerおよび抗BP180 NC16a抗体価の上昇を認めた例が散見されたが,特にELISAスコアが最も鋭敏であった.ELISAスコアとIIF titerを比較した際,ELISAスコア陽性/IIF titer陰性となる例とELISAスコア陰性/IIF titer陽性となる例を認めた.その理由として,前者は感度の違い,後者は認識する自己抗体の違いによるものであると推察した.通常の100倍希釈血清でELISAスコアが高値(Index値>150)を示した各症例において,至適希釈率および真の抗体価を求めた上でモニタリングしたところ,的確に病勢を把握することが可能であった.また,血漿交換療法を施行した難治性類天疱瘡患者に対して,その前・後においてELISAスコアの変動を解析したところ,病因となる血中自己抗体(抗BP180 NC16a抗体)の除去の確認が可能であり,その併用に伴う具体的な有用性が示された.これらの結果より,類天疱瘡の治療に際して多彩な臨床症状を念頭に置きながら,抗BP180 NC16a抗体価を中心として,血清IgE値,好酸球数,IIF titerを定期的に測定することは有意義であると考えた.

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© 2003 日本皮膚科学会
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