日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
原著
糖尿病患者における手指硬化および手指拘縮の臨床的研究
中村 嘉男高沢 和永五十棲 健
著者情報
ジャーナル 認証あり

2003 年 113 巻 12 号 p. 1811-1817

詳細
抄録

われわれは邦人糖尿病患者199人の手指硬化と手指拘縮について詳細に観察し,コントロール(非糖尿病患者群)102人と比較検討した.さらに,手指硬化を示す代表的な疾患である強皮症とその関連疾患と鑑別を試みた.その結果,1)糖尿病患者199人とコントロール(非糖尿病患者群)102人で比較検討した結果,手指硬化および手指拘縮が糖尿病患者群にそれぞれ有意に多く認められた(P<0.0001).2)糖尿病患者199人中48人(24.1%)に手指硬化が観察され,また46人(23.1%)に手指拘縮が認められた.3)手指硬化および手指拘縮の出現率は糖尿病罹患期間(年)とそれぞれ有意な正の相関を認めたが(p<0.0001),性,年齢,糖尿病型および発症時年齢とは有意な相関を認めなかった.4)手指硬化を示した48例中3例で手指からの皮膚病理組織検査を施行した.いずれの3症例も真皮の肥厚,膠原線維の軽度肥厚膨化を認めたものの,膠原線維の増生は認めなかった.5)血清学的検査,臨床所見を総合し,糖尿病患者における手指硬化はいずれもの症例も強皮症による強指症と鑑別可能であり,diabetic digital sclerosisと診断すべきであると考えられた.近年,生活環境と社会環境の変化,人口の高齢化それらに伴う糖尿病患者の急速な増加が指摘されている.1997年,厚生労働省厚生統計協会の調査1)によると糖尿病患者は約690万人と推定されている.この数値に我々の研究結果を当てはめて計算すると,糖尿病患者における手指硬化(diabetic digital sclerosis)および手指拘縮はそれぞれ約165万人と約158万人罹患していると類推できた.それぞれは糖尿病の最も一般的なデルマドロームの一つであり強皮症およびその関連疾患との鑑別に極めて重要な疾患と考えられた.

著者関連情報
© 2003 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top