日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
原著
ゲフィチニブ(イレッサ®)による皮膚病変―下関厚生病院における非小細胞肺癌42例の検討―
進 洋子大畑 一郎小野 友道
著者情報
ジャーナル 認証あり

2004 年 114 巻 14 号 p. 2311-2317

詳細
抄録

進行性非小細胞肺癌治療薬として2002年7月より国内販売された選択的上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブ(イレッサ®)は,重大な副作用は少ないものの,皮膚の副作用発現率は高頻度とされる.平成14年9月から平成15年9月までに下関厚生病院においてゲフィチニブによる治療を受けた肺癌患者42例(男26例,女16例,平均年齢64.0歳),平均投与期間92.6日のうち,発疹の出現を見たものは25例(59.5%),内服開始から発疹出現までの期間は19.2日であった.発疹としては,皮膚の乾燥および皮脂欠乏性湿疹16例,痤瘡様発疹14例(顔面12例,背部3例),脂漏性皮膚炎様発疹7例,紅斑6例,手指の落屑および亀裂7例,爪囲炎2例,多形紅斑様発疹1例でいずれもGrade1ないしGrade2であった.痤瘡様発疹あるいは脂漏性皮膚炎出現後しばらくして,皮膚の乾燥および皮脂欠乏性湿疹の出現を呈したものが6例あった.皮膚の乾燥や皮脂欠乏性湿疹は保湿剤やステロイド外用剤で,痤瘡様発疹はイブプロフェンピコノールクリーム,脂漏性皮膚炎はケトコナゾールクリーム・ステロイドクリーム外用等でいずれも軽快した.発疹の出現と他の副作用との相関はみられず,観察期間中の死亡率は発疹出現群(36.0%)と非出現群(35.3%)で差はなかった.しかし,発疹を理由に内服を自己中断した症例もあった.

著者関連情報
© 2004 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top