日本皮膚科学会雑誌
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原著
老人性乾皮症患者における角層細胞外脂質の量的・質的変化の検討
山中 麻里江濵中 すみ子土田 哲也
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2004 年 114 巻 5 号 p. 967-975

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抄録
皮膚の乾燥症状を呈する疾患には老人性乾皮症・アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬などがある.角層の落屑・粗糙化を来たす老人性乾皮症における角層の細胞外脂質の変化を加齢による影響を含めて検討するため,老人性乾皮症患者28例(平均年齢81.9歳)と高齢正常者5例(平均年齢72.4歳)と若年正常者8例(平均年齢29.4歳)の角層細胞外脂質を採取し,DEAEセファデックスA25カラムにて中性脂質画分と酸性脂質画分に分離し,薄層クロマトグラフィーにて脂質の組成を分析,デンシトメトリーにて定量した.酸性脂質画分は,さらにガスクロマトグラフィーにて遊離脂肪酸分子種の組成比を分析し,陽イオン–マス/マススペクトロメトリーにて遊離脂肪酸分子種の同定を行った.中性脂質画分にはコレステロール・コレステロールエステル・セラミド1~7が含まれていた.酸性脂質画分には炭素数14–26の飽和・不飽和脂肪酸と,微量ながらω-ハイドロキシ脂肪酸,α-ハイドロキシ脂肪酸が含まれていた.加齢により角層細胞外脂質におけるセラミドとコレステロールの割合は減少し,遊離脂肪酸とセラミド7の割合は増加した.老人性乾皮症では若年者と比較してコレステロールエステルの割合が減少した.セラミドが総脂質に占める割合に変化はなかったが,セラミド2とセラミド7の割合が増加しセラミド6の割合が減少した.C18:0の脂肪酸は患者において若年者と比較して増加し,C18:1の脂肪酸は減少していた.また,患者の角層細胞外脂質よりC30:0とC32:1のω-ハイドロキシ脂肪酸を同定した.老人性乾皮症患者における脂質組成は,加齢により生じる変化とは異なる生化学的背景をもつ疾患であることが示唆された.
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© 2004 日本皮膚科学会
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