抄録
A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症(猩紅熱)はリウマチ熱,腎炎を続発する可能性があり,早期診断および治療を必要とする疾患である.本症の迅速診断を目的とした溶連菌抗原迅速検出キットの有用性について,臨床的に本症と考えられた103症例において検討した.その結果,迅速検出キットと培養陽性率の比較ではキットの感度は95.7%,特異度は89.3%であった.培養陽性であった47例より分離されたS. pyogenesすべてにおいて,検査した16種の抗菌剤に感受性を示した.初診までの抗菌剤投与期間により陽性率を比較すると,抗菌剤未投与群と比べて2~3日間前投与群では迅速検出キット,培養とも陽性率が低下し,4日以上前投与群では著明に低下した.以上の結果より溶連菌抗原迅速検出キットは迅速性,感度,特異度の点から本症の臨床診断に有用と考えられた.しかし,前投与された抗菌剤の影響,共通抗原をもつ他菌の存在,検体採取法などの点を十分考慮して正しく評価する必要があると考えられる.