日本皮膚科学会雑誌
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原著
薬剤性過敏症症候群と,中毒性表皮壊死症,スチーブンス・ジョンソン症候群,多形滲出性紅斑,紅斑丘疹型中毒疹におけるヒトヘルペスウイルス再活性化の比較検討
三谷 直子相原 道子伊藤 典彦池澤 善郎
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2005 年 115 巻 8 号 p. 1163-1173

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抄録

Drug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS;薬剤性過敏症症候群)は経過中にhuman herpesvirus(HHV)-6Bなどのウイルスの再活性化が認められ多臓器障害を伴う重症型の薬疹である.DIHSを含め中毒疹における薬剤アレルギーとウイルス感染の関連については不明な点が多い.そこでDIHS 10例と,中毒性表皮壊死症(TEN)5例,スチーブンス・ジョンソン症候群(SJS)4例,多形滲出性紅斑(EEM)6例,紅斑丘疹型中毒疹(MP)16例の計41症例で,血清中各HHV群特異的抗体価測定,血清および末梢血白血球のPCR法によるHHV群DNA検出,サイトメガロウイルス(CMV)抗原測定を行い,HHV群の活性化を比較検討した.DIHSでは,7例でHHV-6の再活性化を認め,そのうち2例で抗体価が上昇する数日前の限られた期間でのみウイルス血症が確認された.また7例中4例で,他のHHV群の再活性化が重複して認められた.HHV-6再活性化の認められなかった3例では1例でCMV,1例でHSVとCMVの再活性化を認めたが,残り1例ではHHV群の関与を示唆する結果は得られなかった.TEN,SJS,EEM,MPでは9例でHHV-6,HHV-7,CMV,HSVの1または2種が活性化していた.HHV-6の抗体価は2例(TEN 1例,MP 1例)で軽度上昇していた.HHV群抗体価の上昇はDIHSにおけるHHV-6にのみ顕著に認められ,発症後約20日以前と約30日以降との比較で明らかであった.以上よりHHV-6の再活性化はDIHSに特徴的であることが示唆された.DIHSの原因薬として抗痙攣薬が多かったものの,免疫グロブリン値の異常と,病型あるいはHHV群再活性化との間に明らかな相関は認められず,大量ステロイド治療後にHHV群が再活性化する傾向も認められなかったことから,DIHSにおけるHHV-6再活性化の誘因は不明であった.

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© 2005 日本皮膚科学会
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