2007 年 117 巻 14 号 p. 2445-2451
表皮角化細胞の良性疾患は存外少なく,ここではinverted follicular keratosis,外毛根鞘腫およびclear cell acanthomaだけを挙げた.ただし前二者は,表皮というより毛嚢上皮が増殖する病態である.脂漏性角化症も,毛嚢の特に漏斗部の基底細胞の増殖を特徴とし,同部への分化を示す病態と捉えることができる.石灰化上皮腫は正常の毛母細胞を模倣する腫瘍で,強拡大でみられる悪性所見に惑わされないことが肝要である.毛包上皮腫と毛芽腫で増殖する細胞は毛嚢の発生の過程でみられる「毛芽」と呼ばれる胚細胞に類似している.増殖性毛包性嚢胞腫瘍は,毛嚢峡部の拡張性病変である外毛根鞘嚢胞の壁が腫瘍性に増殖した病態である.脂腺系の良性病変は,脂腺腫と脂腺腺腫に分けることができ,脂腺上皮腫という疾患概念は現在ではほとんど使用されることはない.広い範囲をカバーするため,本稿では各病態の本質と組織診断のコツに絞って解説した.