2007 年 117 巻 3 号 p. 255-263
1948年,Sophie Spitzは,後にその名を冠されることになる腫瘍を「Melanomas of childhood」として報告した.現在,この腫瘍は良性の母斑の一型であり,成人発生例も少なくないことから,「若年性黒色腫」ではなく「Spitz母斑」と称されることが多い.臨床的には,小児の顔面に生じる紅色の小さな結節が定型的イメージであるが,バリエーションの幅は広い.組織学的には,Spitzの報告以来メラノーマとの鑑別が重要な論点となっており,対称性,境界の明瞭性,表皮内胞巣の形状,胞巣周囲の裂隙,Kamino小体,maturationなどが鑑別点として挙げられている.さまざまな亜型も知られているが,メラノーマとの境界領域ともいうべきatypical Spitz nevus, malignant Spitz nevusをめぐってはcontroversyがある.本腫瘍がメラノーマと全く独立した疾患なのか,良悪性の連続したスペクトラム上に配置すべきものなのかについては,Sophie Spitzから60年近く閲した現在なお議論が続いている.