日本皮膚科学会雑誌
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原著
Basal cell carcinoma:基底細胞癌の臨床病理学的検討
安齋 眞一木村 鉄宣
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2008 年 118 巻 9 号 p. 1697-1707

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抄録

2001年4月より2005年12月までの57カ月間に札幌皮膚病理研究所で病理診断した,1,227病変の基底細胞癌(Basal cell carcinoma:以下BCC)を用いて臨床病理学的検討を行った.臨床像と病理組織像から,症例を結節型,表在型,斑状強皮症型,線維上皮腫型,Infundibulo-cystic型(以下IFC型)の5型に分類し,各症例の性別,切除時年齢,病変部位,そして臨床診断を検索した.従来の報告と異なり,男女比は1:1.26と女性に多く,切除時年齢は,平均70.1±13.9歳(男性平均68.4±13.4歳,女性平均71.4±14.2歳)と従来の報告より高かった.発生部位は,顔面が848病変(69.1%),ついで躯幹が139病変(11.3%)であった.臨床病理病型では,結節型949病変(77.3%),表在型122病変(9.8%),斑状強皮症型119病変(9.7%),線維上皮腫型26病変(2.1%),IFC型24病変(2.0%)であった.切除時年齢は斑状強皮症型が平均72.7±12.0歳と結節型や表在型より有意に高かった.発生部位別の臨床病理病型では,顔面では結節型が83.3%と圧倒的に多く,ついで斑状強皮症型が11.9%であった.躯幹や四肢では,結節型は約50%前後であり,ついで表在型が35%前後であった.病理病型別の発生部位は,結節型と斑状強皮症型,そしてIFC型は,顔面に多く,表在型と線維上皮腫型は,躯幹にもっとも多かった.顔面の部位別では,鼻が242病変と最も多く,ついで頬の149病変,眼周囲の140病変が多かった.結節型ではBCCと臨床診断される病変は,49.2%であり,色素細胞母斑や脂漏性角化症と診断される病変が比較的多かった.表在型も,BCCと臨床診断される病変は51.3%で,ついでBowen病と診断される病変が多かった.斑状強皮症型はBCCと診断される病変が多く,その他潰瘍や瘢痕と診断される病変が多かった.各部位別の臨床診断は,それぞれの部位に多い臨床病理病型を反映していた.10人の患者に生じた24病変が多発性病変であった.基礎疾患としては色素性乾皮症が1例含まれていた.発生部位や臨床病理病型の構成は,単発例とほぼ同様であった.

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