日本皮膚科学会雑誌
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原著
米国および本邦における基底細胞癌治療の比較検討
青柳 哲Nouri Keyvan澤村 大輔清水 宏
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2008 年 118 巻 9 号 p. 1713-1717

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抄録

基底細胞癌に対する二つの異なる手術法として,本邦での標準手術法(全摘術total excision:TE)と米国での標準手術法(Mohs micrographic surgery:MMS)の治療結果の比較を米国マイアミ大学皮膚科で施行された手術例と北海道大学皮膚科での手術例を他施設間,国際共同研究として検討した.臨床的特徴(年齢,性別,腫瘍径,色素の有無,部位)および病理組織学的特徴をそれぞれ術前に群間で比較した.そして,Quality of life(QOL)の観点から,両群についての治療結果を比較検討した.年齢・性別・腫瘍径では両者に有意差は認めなかったが,本邦では色素性病変(黒褐色調)の割合が有意に高かった(81.63% vs 20.65%,p<0.001).MMSはTEと比較して,全体の切除範囲が少なく(4.6±2.7mm vs 5.3±1.4 mm p<0.001),局所麻酔の比率が有意に多い反面,TEでは初回切除のみで組織学的断端陰性を得られる比率が有意に高かった(95.92% vs 53.51%,p<0.001).また再建方法としては,TEではMMSと比較して植皮術の割合が有意に高かった(26.53% vs 10.33%,p=0.009).生命予後が良好である基底細胞癌は,治療法を選択する場合,QOLの観点からの適応の有無も今後のひとつの重要な要素になってくることが予想される.そして,本邦においても,その選択肢のひとつにMMSを含めるべき可能性があることが,今回の比較研究の結果から考察される.

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© 2008 日本皮膚科学会
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