日本皮膚科学会雑誌
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原著
熱傷治療時の少量のヘパリンが契機と考えられたヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)の1症例
松尾 佳美行徳 英一蓼原 太原 武木原 康樹秀 道広
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2010 年 120 巻 8 号 p. 1665-1669

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抄録

81歳,男性,農業.野焼き中に顔面から両上肢にかけて,II度22%,III度2%の熱傷を受傷し緊急入院となった.高度救命救急センターで中心静脈および動脈ラインを確保し全身管理下での治療後,歩行可能まで回復したが,第11病日に著明な血小板数減少と造影CTにて肺動脈と右大腿静脈に大量の血栓を認めた.播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome:DIC)と診断し,ヘパリン投与とデブリードマンおよび植皮術を行った.しかし血小板減少は持続し,血栓症は悪化した.臨床経過より点滴ライン維持のために入院時より使用していた少量のヘパリンによりヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)を生じた可能性を考えヘパリンを中止したところ,徐々に血小板数は上昇した.また血液検査で抗ヘパリン血小板第4因子複合体抗体(HIT抗体)は陽性であった.少量のヘパリンでもHITの原因となり得ることを認識する必要がある.

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© 2010 日本皮膚科学会
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