2011 年 121 巻 6 号 p. 1057-1061
1998年1月~2007年12月までの10年間に金沢医科大学病院皮膚科で経験したtinea capitis 23例の疫学的動向について調査した.1)培養は全例陽性で菌種は23例中Trichophyton(T.)tonsuransが最多で8株,以下T. violaceum 5株,Microsporum(M.)canis 5株,T. rubrum 4株,T. glabrum 1株であった.2)病型は黒点状白癬(black dot ringworm,BDR)が14例と最も多く,BDRの原因菌種ではT. tonsurans,T. violaceum,T. glabrum,T. rubrumによるものが見られた.3)ケルスス禿瘡は6例認められ,原因菌はT. tonsurans,M. canis,T. rubrumが各2例ずつであった.4)T. violaceum感染症は全て家族内発症であった.5)治療はグリセオフルビン内服に比較してテルビナフィン内服の方が短期間で治癒に至っていた.6)外用薬によるtinea capitisの増悪の報告があるが,今回の研究では,増悪例は認めなかった.