日本皮膚科学会雑誌
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原著
難治性重症尋常性天疱瘡に対してリツキシマブを使用した1例
鷲尾 健鬼木 俊太郎辻本 昌理子後藤 典子一角 直行川田 裕味子廣本 敦子山田 陽三永井 宏錦織 千佳子
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2012 年 122 巻 11 号 p. 2655-2661

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抄録

尋常性天疱瘡の治療は時に様々な困難に直面することがある.全身のステロイド投与を基本として,免疫抑制剤や血漿交換療法,ガンマグロブリン療法が用いられる.しかし重篤な副作用や合併症によっては上記の標準治療を継続出来ない場合がある.症例は37歳女性,2004年より口腔内に再発性の水疱形成を自覚し,当科初診となった.臨床症状と皮膚生検,さらに抗Dsg3抗体陽性より尋常性天疱瘡粘膜優位型と診断し,ステロイドとDDS内服で加療したが,症状が増悪するためDDSをミコフェノール酸モフェチル内服に変更した.一時小康状態となったが,その後再度増悪し抗Dsg1抗体も陽性となる粘膜皮膚型の病状を呈した.ミコフェノール酸モフェチルの内服に加えて血漿交換療法を施行したが症状は軽快しなかった.ステロイドパルス療法を行うと一旦は軽快を得るもののその後すぐに再燃を繰り返し,MRSA菌血症も合併したため治療法の変更を試みた.リツキシマブを計4回投与したところ,臨床症状及び抗デスモグレイン抗体価は速やかに改善した.その後約4年間経過観察し,抗体価は徐々に再上昇を認めるものの,臨床症状は以前よりも軽症に留まっている.リツキシマブによる治療効果は抗デスモグレイン抗体価を単に減少させるだけでなく,抗体のエピトープを変化させる等,別の作用機序も働いている可能性を考察した.

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