2012 年 122 巻 11 号 p. 2663-2667
44歳,男性.2年前より,左上腕屈側6 cm大の淡い網状の紅斑,両頬部に5 cm大の褐色斑があり,CK値が上昇していた.皮膚筋炎を疑い皮膚および筋の生検術を施行したが診断にいたらず経過観察していた.半年後,CK値が再上昇し筋力低下と疼痛が出現し,針筋電図にて筋原生変化および筋生検にて筋の壊死像,再生像をみとめた.筋炎特異的自己抗体の一つである抗SRP抗体が陽性であり,病理組織像をふまえて抗SRP抗体陽性筋症と診断した.再度施行した左頬部および左上腕の皮膚生検にて膠原線維の膨化と増生があり,斑状モルフェアと診断した.抗SRP抗体は,これまで難治性の多発性筋炎の患者に陽性のことが多いとされてきた.しかし,最近抗SRP抗体陽性筋症の筋病理はリンパ球の細胞浸潤が乏しい壊死性ミオパチーが特徴であり,多発性筋炎とは異なる疾患概念として提唱されている.抗SRP抗体陽性筋症にモルフェアが合併することは稀であり,本稿では自験例の臨床経過に文献的考察を加え報告する.