日本皮膚科学会雑誌
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原著
インドシアニングリーンの蛍光を用いたセンチネルリンパ節生検 50 例のまとめ
藤澤 康弘中村 泰大丸山 浩中村 貴之川内 康弘大塚 藤男
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2012 年 122 巻 12 号 p. 2875-2883

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抄録

センチネルリンパ節(SLN)生検は今や皮膚悪性腫瘍を扱う上で重要な手技となっている.放射性同位体(RI)と色素を用いた方法が標準的なSLN同定法で90%以上の同定率が得られている.一方で同定に難渋する症例や偽陰性例があることから,現在のSLN同定法には改善の余地があると考えた.そこで我々は2009年12月以降,50例の皮膚癌患者に対して従来の同定法に加えてインドシアニングリーン(ICG)の蛍光を用いたSLN生検をおこない,同定率の向上を試みた.その結果,50例中49例(98%)でSLNを同定し,1症例あたりの同定個数はICGが2.20個でRIの1.81個に比べて有意に多かった(P<0.05,t-test).ICG蛍光法は49例中10例(20%)でRIが集積したSLNと同じリンパ領域内に新たなSLNを同定し,6例(13%)でRIが流れなかった別のリンパ領域に新たなSLNを同定した.これらICGの併用により新たに同定されたSLNの77%が頭頸部,体幹,陰部原発の症例であった.ICGの併用開始後のSLN同定率98%は,併用前50例の当院集計の92%に比べて統計学的に有意な改善ではなかったが,1症例あたりのSLN同定数は有意に増加した(2.20対1.76個,P<0.01,t-test).ICGを用いたSLN生検の報告数はまだ少ないことから,症例の蓄積と長期予後の追跡によりこの同定法の有用性を検討する必要がある.

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© 2012 日本皮膚科学会
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