日本皮膚科学会雑誌
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原著
下肢静脈瘤に対するフォーム硬化療法を併用した手術の短期治療成績
水本 一生新原 寛之森田 栄伸
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2012 年 122 巻 5 号 p. 1381-1388

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抄録

2008年10月より2009年9月までの1年間に当科で経験した下肢静脈瘤の手術症例38肢の術後3カ月における治療成績を検討した.評価にはvenous clinical severity score(VCSS),visual analog scale(VAS),duplex ultrasound(DU)scanningを用いた.術式としては逆流のみられるsapheno-femoral junction(SFJ)に対しては膝下までの部分ストリッピングあるいは高位結紮を,sapheno-popliteal junction(SPJ)に対しては高位結紮を,下腿の不全穿通枝(insufficient perforating vein:IPV)に対しては直視下切離あるいは内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(subfascial endoscopic perforator surgery:SEPS)を施行し,全肢において伏在静脈瘤に対するフォーム硬化療法を併用した.その結果,38肢中32肢(84%)で良好な結果が得られたが,6肢(16%)においてはVCSS,VASの改善が充分でなく,術後DU scanningにおいてもIPVから伏在静脈瘤への逆流の残存がみられた.これら6肢のCEAP分類はいずれもC4で,強いうっ滞症状を有していた.充分な治療効果が得られなかった原因は不完全な逆流処理にあり,非処理のIPVからの逆流で硬化剤が失活し,静脈瘤が残存した機序が考えられた.うっ滞症状が強く,皮膚症状のみられるC4以上の症例では穿通枝処理を含めた完全な逆流処理を行った上で硬化療法を併用することが重要であると考えられた.

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