日本皮膚科学会雑誌
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原著
大量免疫グロブリン静注(IVIG)療法が奏効した抗ラミニン332型粘膜類天疱瘡の1例
廣川 景子西村 景子菅谷 直樹鈴木 加余子福田 俊平橋本 隆松永 佳世子
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2012 年 122 巻 8 号 p. 2097-2104

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抄録

79歳男性.既往歴として糖尿病,B型肝炎,高血圧.初診の数日前より両耳後部に水疱が出現.徐々に顔面に拡大したため当院を受診.ELISA法による抗BP180抗体,抗Dsg1/3抗体は共に陰性.病理組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法では表皮基底膜部にIgG,C3の線状沈着を認めた.正常ヒト皮膚を基質とした蛍光抗体間接法でIgG抗表皮基底膜部抗体を認め,1M食塩水剥離皮膚の真皮側に反応し,表皮抽出液と真皮抽出液の免疫ブロット法は陰性,精製ヒトラミニン332ではα3,β3,γ2サブユニットに反応した.以上より抗ラミニン332型粘膜類天疱瘡と診断した.プレドニゾロン(以下PSLと略す)60 mg/日に,DDS(ジアフェニルスルホン)内服を併用したが,皮疹は軽快しなかったため,400 mg/kg/日の大量免疫グロブリン静注(IVIG)療法を5日間施行したところ,速やかに皮疹は改善した.初診1年3カ月後にPSLを中止したが,症状の再燃はない.初診8カ月後の皮疹軽快時(PSL 15 mg/日内服中)に抗原抗体解析を再度施行したところ,蛍光抗体間接法でIgG抗表皮基底膜部抗体は陰性化していた.精製ラミニン332を用いた免疫ブロット法では,IgGがγ2のみに反応し,α3,β3サブユニットは陰性であり,本症例の病原抗原はα3,β3サブユニットと考えられた.

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© 2012 日本皮膚科学会
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