日本皮膚科学会雑誌
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原著
生物学的製剤時代における乾癬患者の治療満足度調査
鳥居 秀嗣中川 秀己
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ジャーナル 認証あり

2013 年 123 巻 10 号 p. 1935-1944

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抄録

乾癬治療においては治療に対する患者の満足度と生活の質(QOL)の改善が重要な課題となる.難治性乾癬に対して生物学的製剤が使用可能となり,乾癬治療は飛躍的に進歩してきているが,この状況下での患者の感じる治療満足度を明らかにするため,様々な背景を持つ乾癬患者ならびにその主治医を対象としたアンケート調査を実施し,治療に対する満足度について分析を行った.その結果,治療満足度は乾癬の症状や部位,治療法,DLQIスコアによって差異があることに加え,医師と患者が感じる総合的な治療満足度には依然として27.8%のギャップが存在することが明らかとなった.特にDLQIスコア別の治療満足度を検討した結果,0または1の群では治療満足度は79.9%であったのに対し,2~5,6~10,11~20,21~30の群ではそれぞれ52.0%,33.7%,21.5%,0.0%と,スコアの上昇に伴って治療満足度は低下していた.これらの結果より,患者の感じる治療満足度を最大限に高め,医師患者間ギャップを最小化するためには,QOL寛解状態を示すDLQI0または1を目標とした治療戦略が必要であることが示唆された.生物学的製剤は既存治療と比べ高い有効性を示すのみならず,大幅なQOL改善効果も確認されており,医師患者間の治療満足度の相違を解決する有効な治療法の一つとして考慮すべきである.

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