日本皮膚科学会雑誌
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原著
長期未診断で経過しC1インヒビター遺伝子に新規ミスセンス変異を確認し診断した遺伝性血管性浮腫―血管性浮腫情報センターの活用
三井田 博
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2013 年 123 巻 3 号 p. 291-296

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抄録

30歳,男性.20歳時より手の一過性の浮腫が時々出現していたが特に医療機関を受診せず,放置していた.母親と兄2人にも同様の症状が出現していた.また,2011年8月に腹痛を主訴に当院内科に入院しCTで小腸に限局性の浮腫を認めたが,小腸炎として補液のみで軽快したため精査されず正確な診断がなされなかったという既往がある.2011年10月,特に誘因なく,顔面に著明な浮腫が出現し,当院に救急搬送された.呼吸苦はなし.ステロイド,H1拮抗薬の点滴静注の効果はほとんどなく,C4値を測定したところ著明に低下していたため,家族歴もあることから遺伝性血管性浮腫(HAE)を強く疑った.C1インヒビター製剤を投与したところ,顔面の浮腫は消退した.その後の精査でC1インアクチベーター活性が低下,C1エステラーゼ抑制因子定量についても低値を認めたため,自験例を1型HAEと診断した.さらに患者の同意の上で血管性浮腫情報センターに患者血液を検体として送付し遺伝子解析が施行された結果,C1インヒビター遺伝子のエクソン3に過去に報告のない新規のミスセンス変異を認めた.同センターを活用することはHAE診断目的の遺伝子解析やHAEについての最新知見を得ることが可能になり有用であると思われた.

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