日本皮膚科学会雑誌
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新・皮膚科セミナリウム 美容皮膚を日常診療に活かそう―特にシワについて―
1.シワの組織学
今山 修平
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2016 年 126 巻 11 号 p. 2069-2075

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抄録

1.生涯の全経過を通して,ヒト皮膚には(歩けば体重が足底に,話せば表情筋による内からの変形が顔に,という具合に)生命活動に伴う負荷がかかり続ける.負荷を受けた皮膚は肥厚したり硬化して負荷に対応するから,しだいに負荷は薄くて軟らかいままの部分をたどるように変形させて吸収される.これがシワである.

2.小ジワは,表皮と真皮乳頭層までの不均一化による表在性の折れ線(図2)である.真皮乳頭層は表皮プロパーの結合組織(→本文)であるから(外用・ピーリングなどの)無侵襲性の表皮修飾により乳頭層も一括して修飾されて小ジワも消える.

3.大ジワは,深達性の,真皮網状層の中まで表皮が折れ込んだ線(図3)である.不均一になった真皮網状層を(外科的切除・熱変性・充填剤・筋弛緩などの)侵襲性に修飾することで消去する.

4.露光によるシワは,真皮網状層に板状に沈着した弾性線維成分のために,真皮が(厚紙を折るように)直線的に折れた線(図4)である.光熱暴露を減らすことで予防できる.

5.誕生と共に発現し,生涯を通してほぼ変化しない均等な分割模様がキメ(→本文)であり,シワとは異なる.とはいえキメは表皮と乳頭層までの(小ジワと同じ深さの)凹凸であるから,個体が置かれた自然・社会環境あるいは疾患により変化する.この様子は苔癬局面ではキメが直線状になることでも経験される.

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