2023 年 133 巻 11 号 p. 2599-2605
50歳,女性.初診の約2年前より,手足全ての爪の表面に凹凸がみられ,爪の根元の皮膚には強いかゆみが生じるようになった.当科初診時,指趾全ての爪甲に縦走する細かい線条(爪甲縦条)と縦溝を多数認め,爪甲表面は著しく粗造化し,光沢が消失していた.また,近位爪郭の皮膚には発赤と腫脹がみられ,強い瘙痒を伴っていた.爪母から生検を施行し,組織学的に爪母上皮の海綿状態を認め,特徴的な爪症状と合わせて特発性トラキオニキアと診断した.本邦ではあまり認知されていないトラキオニキアの疾患概念について紹介し,診断から治療の考え方について述べる.