日本皮膚科学会雑誌
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皮膚疾患と脂質代謝 第4篇 皮膚角化におけるビタミンAと必須脂酸
足立 功
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1957 年 67 巻 11 号 p. 773-

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抄録

皮膚の角化については從來,多くの人によつて組織學的,生化學的に研究が續けられているが,未だ解明せられていない點が極めて多い.毛嚢に角化を來す皮膚疾患は早くより知られているが,これが榮養障碍に關連ありと唱えたのはStannus(1912)が最初で,爾來特にビタミンA欠乏との關係が注目せられ,Frazier-Hu(1931)は15例の毛嚢角化にビタミンAを投與し輕快或は治癒した事より,斯様な皮膚變化をビタミンA欠乏によるものとし,續いてLoewenthalの東アフリカUgandaに於ける囚人に就ての報告,又Nichollas(1933)のCeylonに於ける勞務者の乾性鮫状皮,粗食の囚人に於けるPapular dry skinと角膜軟化に就てのビタミンA欠乏の報告(Phrynoderma)がみられ,更にFrazier-Hu(1936)の北平に於ける207例に就ての再度の報告やMcCollum(1918),Moult(1943),Sullivan-Evans等の動物實驗,更にはPhrynodermaと組織像を同じくする様な他の角化性疾患に於けるビタミンAの臨床的効果に就ての多數の報告(安田-村田,Brunsting,Porter-Godding,Sulzberger)等によつて,今やビタミンA欠乏と毛嚢性角化症との關係は殆ど常識的にさえなつている.處がPhrynodermaと眼症状との相關關係は必ずしも見出されず(Aykroyd-Rajagopal,Steffens),又ビタミンB複合体の欠乏により毛嚢性角化症が惹起された例(Wolbach-Bessey),壊血病患者に同様の症状を認めた例(Nicolau,Theodorescou,前原)等々の報告があり,更に角化性疾患に血清ビタミンA量は必ずしも低くはないこと,又ビタミンAによる臨床的効果の全くみられない角化性疾患がかなり多いこと等よりして,ビタミンA欠乏と毛嚢性角化との關連に就て少からず疑問が抱かれるようになつて來た.又他面では,最近Flesch(1953)は不飽和の脂肪酸が持つ2重結合が抗ケラチン生成的に働き,しかも之が試驗管内で活性SH基を阻害することから,ビタミンAは皮膚で變化して2重結合をもち,それがケラチン生成のSH基に働くのでないかと想像し,ビタミンAの作用はビタミンA欠乏というより單なる非特異性のものであろうと述べている.更に脂肪の欠乏が皮膚角化に對し重要な因子である事は既にBurr-Burr(1929),丹下(昭7)等により記

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