日本皮膚科学会雑誌
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チロジナーゼ反應に關する研究 第1報 我々のチロジナーゼ反應について
富樫 良吉
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1957 年 67 巻 12 号 p. 832-

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抄録

チロジンは古くから植物,下等動物のメラニン源として,実驗的に証明されていたが,哺乳動物に於ては実証に乏しかつた.然るに,Hogebom et al.,Greenstein et al.は,実驗的にチロジンの酸化酵素であるチロジナーゼの存在を,哺乳動物組織(それは惡性黒色腫に於てではあつたが)に発見した.その後多くの研究者により人體正常組織内にチロジナーゼ活性を証明しようとの試みが繰り返されたが,成功することが出来なかつた.然るに1950年Fitzpatrick et al.が人體皮膚に大量の紫外線を照射することによつて,組織化学的にチロジナーゼを証明することに成功した.敎室吉田はこれを追試し,同様の結果を得たが,伊藤は生理的なメラニン形成を論ずる場合,強力な紫外線照射は必ずしも適当ならずとの見解を示した.その後吉田,富樫は1955年CuSO4溶液,Estrogenによつて,in vivo,in vitroに於て,人間皮膚のチロジナーゼを賦活し,これを組織化学的に証明し得ることを発表した.本篇に於ては,我々のチロジナーゼ反應につき詳述すると共に,本反應に関し更に吟味された各種條件について記載する.我々の方法を記述する前,Fitzpatrick等のそれを記載し比較に便ならしめる.Fitzpatrick等の方法 紫外線紅斑量,連続7日間照射.切除.10%中性ホルマリン1時間固定.水洗.0.1%Tyrosine phosphate buffer solution(pH6.8)0~4℃,24時間浸漬.新たな0.1%Tyrosine phosphate buffer solution(pH6.8)37℃,24時間浸漬.10%中性ホルマリン再固定.標本作製.

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© 1957 日本皮膚科学会
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