日本皮膚科学会雑誌
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梅毒型発作性寒冷血色素尿症に於ける自家抗体の意義について
谷奥 喜平中平 正美小泉 雄一郎
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1958 年 68 巻 12 号 p. 1051-

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抄録

最近身体各部の臓器乃至組織に対する自家抗体が各方面から問題になつているが,我々も発作性寒冷血色素尿症(以下P.C.H.と略する)の1例に於て所謂赤血球や賢盂に対する自家抗体の存在を疑わしめる事実に出会い,また同患者の血清梅毒反応陽性結果などと併せてP.C.Hの発現機序などについて考えてみたことを報告する.寒冷に身体の全部または,その一部が曝露された時に,発作性に血色素尿を出す患者を,我々はP.C.H.と称えていることは周知の如くである.勿論血色素尿症は1849年にCharles Stewartにより記載されたのに始まり,1868年にPofferがP.C.H.と命名した頃より一般に知られていたが,1879年特にLichtheimが寒冷時にのみ起る本症をP.C.H.と名付けて以来,本邦でも多くの報告がある.その後生体内,さらに試験管内で患者血清中に自己の赤血球を溶解する所の溶血素がある事を,夫々Ehrlich(1879)とDonath et Landsteiner(1904)が確かめ,これを自家溶血素と呼んで以来,本邦でもこの所謂自家溶血素なるものが証明されて来ていた.これにより免液血液学の概念が本疾患に導入された訳である.他方1905年のLangsteinの発表以来,本症の患者の血清梅毒反応が可成り高率に陽性に出る事が知られている.又本症の発現に関係深いと見做されている寒冷抗体Cold antibodyには2価(完全抗体)以外に1価の抗体(不完全抗体)が存在し,しかもこの1価の自家抗体が最近Coombs試験により具体的に可視の状態(visible reaction)で証明できるようになつた.もつとも現在の免疫血液学的検査法で証明できるこの自家抗体が,果たして真の意味での自己免疫によつて作られたものか否か,即ち自分自身の正常乃至変性した組織成分により自身が免疫されたものか否かは未だ判然としていないようである.本P.C.H.の例についてはCookms試験の結果の報告は最近だんだんと現われており,(Fischer,福岡,Jordan et al.,冠木,Malley et Hickey,Siebens et al.,土屋等,van Loghem et al.,Suckling,Peterson et Wolford),特に我々の症例の如く直接反応陽性,更に間接反応も疑陽性ながら陽性結果が出た例は割合に報告が少ないようである(Jordan et al.).更に腎盂に対する自家抗体の存在を疑わしめる結果を見たのでここに報告する次第である.

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