日本皮膚科学会雑誌
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皮膚病原絲状菌及びCandida albicansのアミノ酸同化作用に就て 第3報 皮膚絲状菌及びCandida albicansによるケト酸の生成に就て
眞保 謙一
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1958 年 68 巻 7 号 p. 432-

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抄録

ケト酸は生体中に於て糖の中間代謝産物としてのみならず,アミノ酸からも酸化的脱アミノ作用によつて生成されることが知られている.更にこのケト酸とアミノ酸との間にTransaminationが行われケト酸に対應する新しいアミノ酸が形成されることが認められている.このようにケト酸は糖及びアミノ酸の共通の代謝産物で,アミノ酸と糖の橋渡しの役をしているものと思われる.このケト酸が微生物によりその培地中に生成されることは多くの研究者により認められている.Walker,Pearce and ChughtaiはAspergillus nigerにより葡萄糖を含む培地に焦性葡萄酸が生成されることを認め,更にWalker,Hall and HoptonはAspergillus nigerを亞砒酸を含む葡萄糖培地に培養し,焦性葡萄酸の他にDimethyl pyruvic acid及びα-ketoglutar酸を生ずることを認めた.同様にRamachandran and WalkerはAspergillus nigerのglycerolを含む培地中に焦性葡萄酸及びdimethyl pyruvic acidが生成されることを認めた.又葡萄糖からα-ketoglutar酸が生成されることを坂口等は麹菌について,朝井等はB. megatherum及びB. nattoについて認めた.更にColeman and NordはFusariumにより,Jacksonはproteus vulgarisにより夫々焦性葡萄酸が作られるとのべ,Ramachandran nad RadnnはAspergillus niger,A. terreus及A. oryzaeによつて葡萄糖からα-ketoglutar酸及び焦性葡萄酸が生成されることを認めた.更に最近Chattaway and ThompsonはMicrosporum andouinii,M. canis,Trichophyton rubrum,Ep. inguinale等の皮膚病原糸状菌により,その培地中に焦性葡萄酸及びα-ketoglutar酸が生成されることを認めた.このようにケト酸は種々の微生物によつて作られるが,著者もTrichophyton interdigitale,Trichophyton purpureum及びCandida albicansによりケト酸が生成されることを認めたので報告する.

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© 1958 日本皮膚科学会
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