日本皮膚科学会雑誌
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帶状疱疹ウイルスの發育鷄卵内における增殖に關する研究
植田 亮
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1958 年 68 巻 9 号 p. 578-

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抄録

帯状疱疹ウイルスの培養に関する研究は,1944年Goodpusture等にはじまり,Weller等,Blank等は人体組織の組織培養において,帯状疱疹ウイルスを増殖させることに成功し,かつ帯状疱疹患者の恢復期血清との補体結合反應に陽性成績を得たと報じている.一方このウイルスの発育鷄卵内培養に関する報告は極めて少い.即ちCastro-Teixeria,金は夫々このウイルスは発育鷄卵の漿尿膜に特異的病変を起すと述べているが追試に成功されておらず,又Goodpusture and Andersonの本ウイルス感染人皮膚組織を発育鷄卵漿尿膜におく培養法を試み,一定の病変を作つたが,漿尿膜自体は感受性がなかつたと述べ,從つて帯状疱疹ウイルスの発育鷄卵内培養は未だ確立されていない状態である.さて我教室においては,辻本(1954)の報告によると,発育鷄卵内ウイルス増殖の判定法として,或るウイルスにおいて最初に接種したウイルスと一定時間後に接種する他のウイルスとの間に現われる干渉現象を利用し,後接種のウイルスの増殖如何を檢べることにより,最初に接種したウイルスの増殖如何を判定出来ること,即ちウイルス培養において干渉実驗による診断法が可能であることを認めた.例えば日本脳炎ウイルス,ポリオ・ウイルス,リフトバレー・フエバー・ウイルスの発育鷄卵内培養において,上記ウイルス接種後一定時間に各種の赤血球凝集性ウイルスを攻撃接種した場合,最初に接種され増殖したウイルスが攻撃ウイルスの増殖を抑制し,H.I. Test(赤血球凝集試驗)の凝集價が陰性か若しくは対照,即ち攻撃ウイルスである赤血球凝集性ウイルスのみを同時間に接種せしものより低い値となり,攻撃ウイルスの増殖発現時に,夫々の卵の漿尿液のH.I.Testを檢べることにより,最初に接種されたウイルスの増殖を間接的に判定出来ることを実驗確認した.今回私は帯状疱疹ウイルスの発育鷄卵内培養を行い,その増殖判定にこの干渉診断法が利用出来るか否か,又その時の條件を檢討するため実驗を試みた.

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© 1958 日本皮膚科学会
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