日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
表皮の生化学的研究への寄与(Stratum oxybioticumとStratum anoxybioticum)
J. Ferreira-Marques
著者情報
ジャーナル 認証あり

1960 年 70 巻 11 号 p. 1109-

詳細
抄録

皮膚は内外界間の移行器官であるが故に,その組織学的構造並びに生化学的機能は全く特異のものである.組織学的には階と層とより成り,先ず皮下・真皮・表皮という3大階があつて,血液循環,知覚神経系は夫々の階によつて夫々異つた機能を有し,一方,層に就ては,最も代表的な例は表皮で,哺乳動物では5層(種子層・有棘層・顆粒層・透明層・角質層)に分かれ,やはり夫々異つた形態,構造,機能を有している.我々は種々の藥剤(Regaud氏鉄ヘマトキシリン,Heidenhain氏鉄ヘマトキシリン,Altmann氏法,中性赤-Janus緑B生体染色,等によるミトコンドリアの染色;鍍銀法;オスミウム酸処理;等)を用いて表皮の生化学的研究を行い,顆粒層ではGolgi器官は全く存在せず,ミトコンドリアは著明に減少,散在,乃至変性しているという結果を得た.周知の如く,ミトコンドリアは細胞呼吸の自律器官である.ケラトヒアリン層(顆粒層)に於けるミトコンドリアの変性,欠如と同時に,有棘層の上2/3(手掌,足蹠,陰嚢;角皮症;等の際)に大量のグリコーゲンが存在する.この事実は又組織学的にも,ケラトヒアリン細胞が多数の細胞層(掌蹠等)の爲に,一方では乳頭血液循環のオキシヘモグロビンから,他方外界の酸素から,杜絶され隔離されているという所見からも指摘される.

著者関連情報
© 1960 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top