日本皮膚科学会雑誌
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膿皮症に於ける葡萄状球菌の知見補遺 特に抗原性多糖類の単糖構成に就て
岩下 健三山本 駒彦
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1960 年 70 巻 6 号 p. 633-

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抄録

膿皮症に於いて葡萄状球菌(以下葡菌)が極めて重要な役割を演じていることはいうまでもなく,又葡菌に限らず一般に色々の病原細菌が夫々の免疫血清と特異的な血清反応を示し,而もその特異性を規定している物質が多くは多糖類であることもかなり以前から知られている.然しながら,葡菌も全く同様であるが,これら特異多糖類の単糖構成に就ては殆ど分析されていない.葡菌に就てみると,Zinsser-Parker(1923)以来,その含水炭素成分が特異的血清反応を示すことは多くの人により報告されているが,その単糖構成に就てはJulianelle-Wieghard(1935)が病原性菌株と非病原性菌株との間に光学的旋光性及び加水分解により生ずるsimple sugarに差のあることを指摘したのに始まり,川上(1943),Fellowes-Routh(1944)の業績がみられる位のものである.而も川上,Fellowes等は共に病原性黄色葡菌のみに就て検討しているに止まり,加うるに前者によるとacetylhexosamine,galactoseが検出されpentoseは見出されていないのに対し,後者によるとpentose,glucosamineの存在が認められている如く,その成績は必ずしも一定していない.そこで我々は膿皮症研究の一部として,頭部の多発性皮下膿瘍から分離した病原性黄色葡萄株と健康者の健皮から分離した非病原性黄色葡萄株とに就て,その各々の特異多糖類を精製分離し,その単糖構成をpaper chromatographyによつて分析し比較検討してみた.以下はその得られた知見の概要であるが,この研究に就ては北大の山田守英氏,札幌医大の植竹久雄氏,京都府立医大の鈴木成美氏の3細菌学教授の援助に負う処が甚だ大きい.冒頭に記して厚く謝意を表す.

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