日本皮膚科学会雑誌
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組織吸収スペクトル法による表皮細胞核核酸の研究 表皮角化の組織化学的研究 続報
嶋 多門玉井 定美
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1962 年 72 巻 11 号 p. 819-

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抄録

著者らは,年来,皮膚の角化現象の基礎的研究として,種々の組織化学的手法によつて,表皮内物質の2,3の分布について検索を行ない,その成績は既に日本皮膚科学会総会及び本誌に発表したが,その結果は必ずしも満足すべきものが得られず,研究に一頓挫を来たしていた.抑々,組織化学的手法が,形態学に加えて構成成分の性質及びその占位を明示するという点で,組織乃至細胞形態学を一歩前進させるものであることは論を俟たない.然し,この方法による場合は,組織乃至細胞の染色性の強弱そのものによつてのみ,物質の量乃至は活性度の強さを判断せざるを得ず,従つて,染色手技の差異,更には研究者の主観によつては,その判定の客観性に疑義を抱かせる場合が少なくない.これは,組織化学的手法のもつ宿命的限界ともいえよう.従つて,形態学及び物質の占位をともに呈示し,面も,該物質の量を一定の数値として表わすことの出来る方法の希求されるのは当然であつた.近年,この方法に副うものとして出現したのが,Caspersonらによって創められた組織吸収スペクトル法(又は顕微測光法)である.本法は,組織乃至細胞内の物質の分光吸収特性を利用して,当該物質の占位と数量とを観察,測定するものであり,未だ目新しい手法であつてその当否は今後の問題として残されてはいるものの,新しい方向の組織化学的方法として極めて将来性のあるものと考えられる.最近,著者らは,組織呼吸スペクトル法を用いて表皮内のデスオキリボ核酸の分布を検索することが出来たので,未だ予報的段階ではあるが,・に報告する次第である.

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© 1962 日本皮膚科学会
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