日本皮膚科学会雑誌
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皮膚疾患における蛋白代謝の研究 実験的家兎皮膚炎における血清蛋白像
竹中 守
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1962 年 72 巻 12 号 p. 954-

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抄録

近年における自然科学の進歩は複雑な生体内代謝態を細微にわたり明らかにしつつあるが,もとより生体において物質代謝はかけがえのない生命の表現であり,各細胞,組織,器官の生活力の表現である.従つて疾患が生体の1つの病的状態である以上,疾患と代謝乃至組織,臓器機能との関係が密接不可分のものとみなされるのは当然であつて,既に数多の先人の指摘してきたところである.皮膚科領域においてもKrebich,Milbradtをはじめとして代謝乃至組織,臓器機能との相関関係を追求することによつて皮膚疾患の発生機序を解明する手懸りを求めようとした先考はかなり多数にのぼるが,特に近年の微量測定法の進歩はかかる代謝乃至臓器機能と皮膚疾患の直接的乃至間接的関連の存在を前提とする疾患準備性の概念の確立に貢献するところ甚だ大きく,更に最近の酵素,ホルモン,ビタミンなどの研究の進展と共に,この方面における更に未開の新分野も開かれようとしている.これら諸代謝の中にあつて「生命とは蛋白質の存在様式である」といわれる蛋白代謝,なかんずく血清蛋白代謝については古くから注目されていたが,1987年Tiseliusにより電気泳動法が考案されて以後測定精度も上がり臨床的にも応用し易くなり,更に約10年前より濾紙電気泳動法が実用化されるに及んで一層の発展をみたのではあるが,なお不明の点が多くて十分というには程遠く,殊に皮膚科領域においては濾紙電気泳動法による血清蛋白の研究は非常に少ない.私は複雑な皮膚疾患の本態をうかがい知る手掛りを血清蛋白代謝に求め,まず家兎に実験的にクロトン油皮膚炎を起こしてその血清蛋白質の推移を濾紙電気泳動法によつて検討し,次いで実験的肝障碍家兎についても同様にその蛋白像の変動と皮膚炎の全経過を通じて詳細に追求した.更にかかる人工皮膚炎家兎ならびに肝障碍皮膚炎家兎に対して副腎皮質ホルモンを投与し,その血清蛋白像に及ぼす影響についてもあわせ観察した.それらの成績と共にいささかの考察を加えて報告する.

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