日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
皮膚科領域におけるUridine Diphosphoglucose Dehydrogenaseの組織化学的研究 第Ⅱ編 肥胖細胞におけるUDPG-DH活性について
神畠 茂
著者情報
ジャーナル 認証あり

1966 年 76 巻 4 号 p. 212-

詳細
抄録

肥胖細胞mast cellは周知の如く古く1878年Paul Ehrlichの発見命名にかかるもので,発生学的形態学的には線維芽細胞に近いものとされ,病理学的な研究はきわめて多く枚挙に暇がない.本細胞の特徴はいうまでもなく,原形質内に好塩基性でトルイジンブルー等でメタクロマジーを呈する顆粒が存在するとのことであり,その生理作用と関連して原形質顆粒の化学的検討が近年研究の焦点となつている.まず原形質顆粒のメタクロマジーについては,酸性ムコ多糖類(以下AMPSと略記)の存在に起因することが近時明らかにされ,Holmgren & Wilander,Jorpes et al.,Oliver et al.,Ehrlich et al.,Balazs & Holmgren及びBaeckelandらは顆粒内にheparinが存在することを指摘,Asboe-Hansen,Riley,Rothman et al.及びWegelius & Asboe-Hansenらはそこにhyaluronic acidが存在すると報告している.かかるheparin或いはhyaluronic acidが脱顆粒により結合織間基質のAMPSの供給源として働くことは多くの組織化学的研究の示す所である.一方メタクロマジーとは直接の関係はないが,炎症或いは瘙の問題と密接に関連して,顆粒内のhistamineとserotoninの態度がとりあげられている.すなわちHolmgren & Wilander及びRiley & Westは各種動物組織中のhistamine含有量と肥胖細胞数との間に比例関係を見出し,Oliver et al.は犬,猫,小牛の肥胖細胞腫より多量のhistamineを抽出しており,Nicker及びZachariaeは色素性蕁麻疹病巣部にhistamine含有量の増加せる事実を指摘している.serotoninに関しては,ラッテの肥胖細胞についてBirt & Nickerson及びWestがその存在を認めているが,人の肥胖細胞においては証明されず,一般にserotoninは存在しないと考えられている.またUltmannは人のsystemic mastocytosisにおいて血清中のserotonin値は正常以下,組織中のserotonin量も正常範囲内で,とくに肥胖細胞の増加の著るしかつた脾においても5-hydroxytryptophan decarboxylaseは正常値以下であつたと述べ,人の肥胖細胞ではserotoninの産生は行なわれないものと推論している.このように肥胖細胞とくにその原形質顆粒中のこれらの化学物質は本細胞の種々な機能と密接に結びつくもので,かかる化学物質の代謝面を酵素学的に検討する要もここにあると考える.そこでまず肥胖細胞中のかかる化学物質は他組織で形成され,phagocytosisの結果細胞中に取りこまれて顆粒状をなしたものか,或いは肥胖細胞中でintracellular biosynthesisが行なわれた結果生じたものかが大きな問題となる.因みに肥胖細胞中には多くの酵素が証明されている

著者関連情報
© 1966 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top