日本皮膚科学会雑誌
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コルチコイド軟膏の効果判定に関する研究 第2報 各種コルチコイド軟膏の臨床効果に関する検討
高屋 通子
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1969 年 79 巻 11 号 p. 838-

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抄録

周知の如く,コルチコイド(以下「コ」と略す)軟膏は,Sulzberger,M.B.によつて1% hydrocortisone軟膏(HCと略す)に,全身投与に匹敵する素晴しい抗炎症効果が発見されてた関係で,その後新製剤の登場する毎に,主としてこのHC軟膏が基準に含有量乃至は臨床効果が検討され,かくして,現在の市販濃度が定められた.従つて現在市販の各製剤は,濃度,臨床効果,価格などの種々の面からみて果して十分満足すべきかどうか,なお検討の余地があるように思われる.ところで,この種の製剤が市販されるまでには通常まず動物を用いて副作用の有無が検討され,つづいてGranuloma pouch法(この場合局所に一定量の「コ」製剤が投与される),Cotton pellet法(特殊の方法で,局所的に被検製剤が投与される),Fibroblast assay等でその力価が確認された後,市販される直前の段階で,人体に試用されるが,その場合既知の製剤の力価が重要な参考資料となる.しかし,最終的には結局軟膏製剤としての臨床効果が肝要で,通常1%HC軟膏を標準に云々される.ところが,どの製剤も「コ」として十分な量が添加されているので,それ程著しい効力差がみられないのが通例である.ところで,「コ」の外用療法は,吸収されて全身的影響をおよぼす恐れが殆んどないため全身投与と異なり,HCの如き既に内用剤としては古典的な製剤でも,結構安心して使用できる.勢い製剤が増加する一方で,現在使用可能の剤種は10種を下らず,さらに基剤,添加剤に一寸工夫を凝らした製品を数え挙げると,恐らく数十種にのぼるのではあるまいか.かような次第で,我々臨床家は一体どの製剤を選んだらよいか誠に判断に苦しむ.そこで普通,新製剤が登場する度に,double blind法が試みられているが,従来の方法は最後の判断を百分率で求めたものが多く,従つて判定基準も曖昧なものが多く,余程効力の違いがないと明らかな優劣の相違が現われない.かような見地から私は,第1報で詳述した,double blind法(二重盲検法)にSequential analysis(計数型逐次検定法),Ridit analysis(Ridit 検定法),ならびにRidit sequential analysis(Ridit値を応用した計数型逐次検定法)なる3つの推計処理を適宜組合せて処理する方法を考案実施したが,今回はこれら特殊検定法を用いて,「コ」軟膏の至適濃度,製剤間の優劣,基剤による臨床効果の違い,投与方法,適応症とくにdouble blind法の対照となる疾患の選択などを検討,些か知見を得たので報告する.

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© 1969 日本皮膚科学会
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