日本皮膚科学会雑誌
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色素性蕁麻疹における真皮マスト細胞の微細構造
森安 昌治郎
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1969 年 79 巻 4 号 p. 288-

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抄録

マスト細胞は結合織に富んだ皮膚,臓器被膜あるいは粘膜下層などにおいて,主として小血管や神経の周囲に散在性にみられる細胞でその原形質内にmethylene blue,toluidine blueといつた塩基性色素によつてmetachromasiaを呈する特殊顆粒を有することにより特徴づけられている.マスト細胞の顆粒内にはheparinを主体とする粘膜多種類,蛋白分解酵素,histamine,またある種の動物ではこれらのほかにserotoninなどが含まれており,近年これら顆粒内化学物質の遊離機構の生理学的あるいは病理学的意義に関して多大の注目がむけられている.マスト細胞は種々の皮膚疾患で真皮結合織に増加してくる.とくに,線維性組織の増殖が盛んな慢性炎症では増加が著明である.一方,色素性蕁麻疹はマスト細胞が腫瘍性に増殖し,本細胞増殖と臨床症状とのあいだに明らかな因果関係の認められる特異な疾患である.本疾患の皮疹部真皮に浸潤したマスト細胞の電子顕微鏡レベルでの形態学的追求についてはOrfanosらやHashimotoらの報告があり,とくに顆粒内微細構造や顆粒形成機転に多くの示唆が与えられるが,なお未知の問題は多い.われわれは2例の色素性蕁麻疹患者についてその皮疹部のマスト細胞を電子顕微鏡により検索し,興味ある所見をえたので以下にのべる.

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© 1969 日本皮膚科学会
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