日本皮膚科学会雑誌
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Mycobacterium marinum感染による多発性皮膚疾患の1例
山本 昇壮藤原 義己斎藤 肇田坂 博信小田 咲子
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1970 年 80 巻 8 号 p. 544-

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抄録

プールで受傷した部位に生じた皮膚結核様病変が,Hellerstromによつてはじめて報告されて以来(1939,1951),同様の症例がClevelandおよびReesらによつても報告されこれらのいずれにおいても,プールで泳いだこととなんらかの関連があろうことが示唆されたが,その原因については全く不明であつた.ところが,NordenおよびLinellは,同様の病像を呈した患者の病巣部から1抗酸菌の分離に成功し,これに対してMycobrcterium balneiという種名を与えた.その後ZettergrenらおよびMollohanらによつても同種の抗酸菌が証明されるに至り,いわゆるswimming pool granulomaはMycobacterium(以下M.)balneiによる1感染症であることが一般に認められるところとなつた.ところで,最近に至りM.balneiとAronsonの分離命名したM.marinumとは同一菌種であることが明らかにされ,その命名の優先権よりM.marinumの種名を採用することの妥当性がWayneらによつて指摘されている.Swimming pool granulomaの臨床像としては,本菌によつて汚染されたプールなどで受けたとおもわれる擦過傷部に限局した無痛性の赤褐色小丘疹あるいは浅い潰瘍,痂皮形成などがみられるが,しばしばLupus vulgarisまたはTuberculosis verrucosa cutisなどに類似した病像を呈するものもあるとされている.M.marinumの病原性は比較的弱く,本菌感染症は通常数ヵ月で自然治癒するものが多いようであるが,稀には数年の経過をみたものも報告されている.ところで,最近われわれは,多様な皮疹が全身にわたつて散在性にみられ,しかもきわめて長い経過をとつたとおもわれるM.marinum感染症の珍らしい1例を経験したので以下報告する.

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