糖尿病では罹患早期から全身的規模で微細血管の領域に器質的障害が発現し,その病理組織学的変化の主徴は,内皮細胞の増殖,肥厚,収縮,基底膜肥厚などの類似所見であるといわれている.このような糖尿病性微細血管障害の一環をなす皮膚微細血管変化について,電子顕微鏡的検索がすでに数多く行なわれたが,大部分は皮膚微細血管の臓器特異性を充分考慮せず,単に形態像を論じ,その本態,糖尿病重症度との関係,生検が困難な諸臓器組織血管変化との相互関連について一定の成績が得られていない.本論文は皮膚微細血管の構造的,機能的特異性から,糖尿病時の微細構造を再検討するとともに,真皮における若干の細胞,組織の基底膜変化を観察した結果について報告する.