日本皮膚科学会雑誌
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梅毒抗体の蛍光抗体法による観察
斎藤 胤曠樋口 光弘丸山 光雄
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1971 年 81 巻 12 号 p. 1070-

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抄録

1906年Wassermannらによつて創案された先天梅毒胎児の肝抽出エキスを抗原とする血清の補体結合反応,いわゆるWassermann反応は,爾来60余年間実にさまざまの変遷を受けて今日の梅毒血清反応となつたのであるが,特に近年その生物学的偽陽性を脱却して特異性を高めようとする工夫から,梅毒トレポネーマを抗原とする諸術式が案出され,梅毒血清反応に対する考え方に大きな転機が訪れている.現在わが国で知られている主な梅毒の血清学的検査法を水岡は整理して表1としたが,使用する抗原をCardiolipin-LecithinとするSTS(serologic tests for syphilis)即ちnon-treponemal reactionと抗原がTreponema pallidum(以下TPと略記)そのもの,またはTPからの抽出物であるtreponemal reactionの2つに大別される.そしてこれらの反応で検出される抗体は同一のものではないと考えられている.例えばTPそのものを抗原とするTPIは1949年Nelson and Mayerによつて考案された劃期的反応であるが,彼ら自身Eagle抗原を用いての吸収試験によりその前後のTPI抗体価に変動のないことを確認しており,中村も梅毒血清からVDRL抗原(Cardiolipin抗原)でいわゆるレアギンを吸収した前後のTPI価が変動しない事実や,Cardiolipin-Lecithin抗原と梅毒血清との沈殿物を家兎に静注しSTS陽性としてもTPIは陰性であること,さらにSTS,TPI共に陽性のヒトおよびウサギ血清からレアギンを分離精製しても,このレアギンはTPI陰性であることなどを見出しているからである.またその他のtreponemal reactionのうちTPIA抗体についてはNelsonが,TPCF抗体についてはPortnoy and Magnusonが,RPCF抗体についてはMillerが何れもレアギンと異なるものであることを記載している.TPHA抗体についてはこの術式を確立した富沢が吸収試験,家兎免疫実験からやはりCardiolipin反応抗体との関係はなさそうであると主張しており,FTA抗体でも樋口・皆見らはVDRL抗原で吸収してもFTA価にほとんど変化をみないことから,レアギンとは別のものであることを認めている.

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© 1971 日本皮膚科学会
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