日本皮膚科学会雑誌
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ヒト表皮におけるウロン酸経路の酵素
福井 清美
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1971 年 81 巻 3 号 p. 209-

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抄録

1962年Jacobson and Davidsonは幼若家兎皮膚からuridine diphosphoglucose dehydrogenase(UDPGDH)を分離精製し,本酵素はuridine diphosphoglucose(UDPG)と補酵素nicotinamide adenine dinuclcotide(NAD)との反応を触媒し,UDP-D-glucuronic acidを形成することを証明した.UDPGはglycogen合成においてglycosyl donorとして重要であるが,一方UDPGDHによつて酸化されてuronic acidを供給することはよく知られており,形成されたuronic acidはamino sugarと結合して,mucopolysaccharide chainを産生し,かつ炭水化物代謝の五炭糖回路へ直接導かれる(Fig.1).ヒト表皮,特に細胞間隙にmucopolysaccharideが存在することは,組織化学的に証明されているが,Flesch,Flesch and Esodaは正常ならびに病的角層中にもこれが存在することを生化学的に証明した.一方Braun-FalcoらならびにBarkerらはヒト表皮がradioactive sulfateを取り込むことを観察し,acid mucopolysaccharideを形成するだろうとしている.Mucopolysaccharideは表皮細胞間の“cement”物質として重要であるが,1968年Mercerらは電子顕微鏡的組織化学の手技を用い,きわめて美麗にその存在を示している.Uronic acid pathwayにおける各酵素について,基礎的研究がなされているが,表皮細胞によるいわゆる“生物学的糊状物質”の産生に必要な一連の酵素活性に関する生化学的研究は未だ見出すことができない.表皮におけるβ-glucuronidase活性についての組織化学的証明ならびに生化学的証明については数多くの報告に接するが,uronic acid代謝に必要な酵素については,UDPGDH活性の組織化学的ならびに生化学的研究が発表されているに過ぎない.本研究の目的はヒト表皮における炭水化物代謝のuronic acid pathwayに属する4個の酵素について,定量的ならびに動力学的に分析し,この分野の情報をさらに拡大し,あわせて文献的考察を行なうものである.

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© 1971 日本皮膚科学会
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